満月の日は野菜・果実の入荷が多い?
差は見られない
古くから、月の満ち欠けで種まきや収穫の時期を決める「農事暦」「バイオダイナミック農法」が世界中にあります。とくに満月へ向かう「実の日」は果実がよく実る、と言われます。それを、市場に届く野菜・果実の量で検証します。指標は東京都中央卸売市場・青果の日次卸売数量。
総卸売数量(青果・全分類)
- 平均(全期間)
- 7,158,502 kg/日
- 平常(同じ曜日・同じ月の平均 = 100)
- 100.0
- 満月の日 (±24時間)
- 100.7
- 新月の日 (±24時間)
- 99.7
- 満月の日の判定
- 差は見られない
野菜(葉物・根菜が中心)
- 平均(全期間)
- 5,546,536 kg/日
- 平常(同じ曜日・同じ月の平均 = 100)
- 100.0
- 満月の日 (±24時間)
- 100.8
- 新月の日 (±24時間)
- 99.7
- 満月の日の判定
- 差は見られない
果実(「実の日」が効くとされる対象)
- 平均(全期間)
- 1,611,965 kg/日
- 平常(同じ曜日・同じ月の平均 = 100)
- 100.0
- 満月の日 (±24時間)
- 100.5
- 新月の日 (±24時間)
- 99.5
- 満月の日の判定
- 差は見られない
対象データ: 2004年〜2026年・東京都中央卸売市場 日報(青果・全市場)・5,919 営業日分
第2幕: 月でないなら、何が青果を動かすのか
「差」を探しに来た方へ。本物の差はこちらです。
×1.3
入荷を最も大きく動かすのは、市場の開市リズムです。最も多い月曜日は最も少ない水曜日の約1.3倍。季節(旬)でさえ、最も多い12月で年平均の約1.1倍にとどまります。月の位相ではなく、気温と日照のめぐり――そして市場のカレンダーが、量を決めているのです。
「実の日」が効くなら果実にこそ差が出るはずですが、その果実も満月の日は平常と変わりません。月の暦は、畑のカレンダーにはなっていないのです。
満月そのものは収穫の量を動かしません。畑を回しているのは季節と天気――月ではなく、太陽のめぐりです。
月で畑を回す「農事暦」
種まきや収穫の時期を月の満ち欠けで決める――この考えは世界中にあります。日本の旧暦に根ざした農事暦、ヨーロッパのバイオダイナミック農法(シュタイナーに始まり、マリア・トゥーンの月のカレンダーが有名)。とりわけ満月へ向かう「実の日(fruit days)」は果実がよく実り、味も乗る、と言われます。月が水を引き上げ、種子や果実に生命力を満たす――そんなイメージです。
もし本当に月が作物を実らせるなら、その野菜や果実は畑から収穫され、市場へ運ばれ、せりにかけられます。だとすれば――満月の前後には、市場に届く青果の量が増えていてもおかしくありません。 この問いを、日本最大級の青果市場である東京都中央卸売市場の、約22年分・日次の卸売数量で確かめます。
この判定はどう計算しているか
- データは東京都中央卸売市場「日報」の青果・全市場の日次卸売数量(2004年〜、Shift-JISのCSVを全営業日分集計)。総量に加え、野菜(葉物・根菜が中心)と、「実の日」が直接効くとされる果実を分けて見ています
- 青果市場には強い曜日リズム(休市日)と季節性(旬)があります。そこで「同じ曜日×同じ月」の平均を期待値とし、実測÷期待の指数で比較します。出生・事故・魚トピックと同じ調整方式です
- 日本時間の正午の月齢で「満月の日(瞬間±24時間)」「新月の日」を判定し、各グループの指数の平均を平常(100)と比べます
詳しい判定基準は方法論をご覧ください。
データを読むときの注意
市場の入荷量は「収穫そのもの」ではなく、供給の代理指標です。収穫から出荷・せりまでには短いラグがあり、貯蔵のきく根菜や輸入果実は収穫日と切り離されて流れます。それでも、月が収穫を左右するほどの力を持つなら、22年・数千営業日の入荷の波に、その影が差すはずです。とりわけ「実の日」が効くなら、まず果実に差が出るはずです。
真犯人は、旬と市場のリズム
畑を動かしているのは、月の位相ではありません。気温と日照がめぐる「旬」こそが、いつ何がどれだけ採れるかを決めます。夏に実りものが集まり、冬に葉物が締まる――そのリズムは満月よりはるかに強く、市場の量に刻まれています。そこに市場の開市リズム(休市日)が重なる。月の暦は、畑のカレンダーにはなっていないのです。月が確かに動かしているのは、作物ではなく潮でした(→潮位)。
データ出典
- 東京都中央卸売市場 日報(青果・全市場の日次卸売数量。出典: 東京都中央卸売市場)
- 月齢・朔望の瞬間は Jean Meeus "Astronomical Algorithms" のアルゴリズムによる自前計算(UTC基準)
最終更新: 2026年6月14日 01:17 (UTC)(毎日自動更新)